〜平成生まれの異端児、福祉業界の若きリーダー〜 三笠商事福祉事業部・三澤颯さん

2018.08.07 (火)
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〜平成生まれの異端児、福祉業界の若きリーダー〜
三笠商事福祉事業部・三澤颯さん

 

 埼玉県北西部に位置する秩父市で2017年3月、それまでの福祉業界の常識を覆すような画期的なデイサービス施設がオープンした。

 

 立ち上げたのは三笠商事福祉事業部に籍を置く、平成生まれの若きリーダー、三澤颯(みさわ・はやて)さん。開業から約1年半が過ぎた現在、オープンからの経緯や今後の展望など、お話をお聞きした。

 

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 秩父市のこのデイサービス施設が他と大きく異なるのは、パチンコやカジノ、麻雀など一般的な施設には置かれないような娯楽が充実していること。

 

 「オープン前には、パチンコやカジノ、麻雀などのギャンブルを取り入れた施設ということで、多くの関係者の方から叱咤されました」(三澤氏)と語る通り、これまでにないサービスを提供するのは前途多難だったと当時を振り返る。

 

 通常、デイサービス施設を開業する場合、居宅介護支援事業所を訪問して新たな施設をPRする。

 

 居宅介護支援事業所というのは、在宅の要援護者が適切に介護サービスを利用できるよう、ケアマネージャー(介護支援専門員)が要介護認定申請の手伝いや、利用者の居宅サービス計画(ケアプラン)作成の手伝いをする機関。

 

 デイサービス施設の新規開業を周知することで、居宅介護支援事業所は要介護者に対して「秩父市内に新たな施設が出来ました。ケアプランに合うようでしたら利用してみてはいかがですか」と紹介してくれ、承諾した利用者がデイサービス施設と契約するという仕組みになっている。

 

 秩父市内には現在、市が運営する地域包括支援センター、社会福祉法人、民間が運営する事業所、と3種類の居宅介護支援事業所が存在し、それらを合わせると50ヶ所あまりになるという。

 

 三澤さんは2017年3月の開業前、それら全ての居宅介護支援事業所を巡り、新たな施設がオープンすることを伝えたが、反応は芳しいものではなかった。

 

 最も多く聞かれたのが「麻雀やパチンコ、カジノといったギャンブルが、介護保険制度が適用されるデイサービス施設にとって適切なのか」という声だった。

 

 デイサービスの利用者は、介護保険制度により自己負担額が利用料金の1割に抑えられている。簡単に言えば国の税金で支援されている施設で、ギャンブルという娯楽を提供することが倫理的にどうなのか、ということ。

 

 一般的なデイサービス施設では、利用者は折り紙や塗り絵、踊りや体操などの娯楽を提供しているの現状からすると、麻雀やパチンコはあまりに「ぶっ飛んだアイディア」と捉えられたようだ。

 

 また、三澤さんは新施設の責任者として居宅介護支援事業所を回ったが、若干24歳の若者はそう認識されず「介護事業をなめるな。責任者を呼んで来い!」と罵声を浴びることもあったという。

 

 それでも三澤さんは自らの考えを曲げることはなかった。

 

 なぜか?

 

 「多くの男性にデイサービスを受けてもらいたい」という信念があったからだ。

 

 それはどういうことか?

 

 三澤さんは以前、東京都内の接骨院に勤務していたが、その頃から、患者は女性が多く男性は「どこか取りこぼされている」と感じていたという。

 

 福祉業界に入ってからも「デイサービスは、職員はもちろん管理者も女性であることが多く、サービス内容も女性目線になっていて、男性が喜ぶようなデイサービスがほぼ無かった」と痛感。そうした状況をマーケティング的にひっくり返したい、と意識するようになったという。

 

 一般的なデイサービス施設では、女性利用者が男性利用者の数を大きく上回っており、利用者全体に占める女性の割合が8割程度という施設が多く、なかには9割を超えるところもあるという。

 

 その要因を「女性の方が男性よりコミュニケーション能力が高く、デイサービス施設という複数の利用者が集まる場所で楽しい時間を過ごせやすい」と三澤さんは分析。

 

 前述の通り、折り紙や塗り絵、踊りなどの娯楽を提供する施設が多いなか、「いい歳になって折り紙や塗り絵などやりたくない、と考える男性が多いことも施設利用率の少なさに繋がっていると思います」という。

 

 こうした現状を打開したいと考えた三澤さんは、どうしたら男性の利用者にデイサービス施設を使ってもらえるか、を常に頭の中に置いて新施設の立ち上げを進めた。

 

 まずは施設に来てもらわないことには、定期的な利用にも繋がらないので、男性利用者が一瞬で「行ってみたい!」と思うような、目を引く何かが必要だと思うようになった。

 

 その結果、男性が好むような娯楽、つまりギャンブルを新施設に取り入れることを思いついた。デイサービス施設をアミューズメントパークのような楽しい場所にしたい、という以前からの考えとも合致した。

 

 とはいえ、埼玉県秩父市というのは、どちらかというと閉鎖的な土地柄。そんな場所でギャンブルを取り入れたデイサービス施設が受け入れられるのか、病気や怪我のある利用者がギャンブルをするのか、認知症の利用者もできるのか、など数多くの疑問や不安を抱えながらのスタートを迎えることとなった。

 

 2017年2月に内覧会を行い、3月から本格的にオープンしたが、三澤さんの不安が的中したのか、初月の利用者は僅か3人にとどまった。

 

 そこで三澤さんたち施設のスタッフは、高齢者が住んでいる集合住宅などを中心に、秩父市内で1ヶ月にわたりチラシを撒き続けた。

 

 そうしたなか、あるエポックメイキング的な出来事がオープン直後に起きた。ある男性利用者のエピソードだ。

 

 他のデイサービス施設を利用していたものの「どうも楽しめないし合わない」と感じていたその男性は、麻雀が好きだったこともあり、家族の勧めで三澤さんの施設を使い始めた。

 

 5分前のことも忘れてしまう彼はそれまで、施設利用中も頻繁に家族に電話し、忘れてしまったことを逐一確認するような状況だったという。

 

 三澤さんの施設利用回数も当初は週に1回にとどまっていたが、徐々に楽しい時間を過ごせるようになったことで週4回の利用にまで増え、頻繁だった家族への電話もいつしか無くなっていた。

 

 昔好きだった麻雀をやることで脳が活性化されたことや、頭を使うようになって夜もぐっすり眠れるようになるという好循環が生まれたためだ。三澤さんには「父が(良い方向に)変わりつつあります」という声が届くなど、ご家族からも喜ばれる結果となった。

 

 そのとき「このデイサービス施設は間違っていない。このままで行ける!」と三澤さんは確信したという。

 

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 ここで施設での1日を簡単に紹介する。

 

 毎朝、職員が車で利用者の自宅へ迎えに行き、施設に到着するのが朝9時半。バイタル(血圧)や体温をチェックしたのち、10時から15分間にわたって朝の体操を行う。レディガガなど洋楽を流すことが多いという。

 

 その体操に参加することで、施設内のみで使用できる仮想通貨が手渡され、利用者はその仮想通貨を用いて正午まで2時間近く、自身がやりたいと思う娯楽を楽しむことができる。

 

 2018年8月現在、麻雀やパチンコ、カジノなどギャンブルのほか、オセロ、将棋、囲碁、カラオケと全7種類の娯楽が用意され、なかでもカラオケは専用のカラオケルームが完備されるほどの充実ぶり。

 

 一般的なデイサービス施設では、利用者全員が塗り絵、折り紙などひとつの娯楽を楽しむ一方で、三澤さんの施設では利用者が各々、好きなものに取り組めるという点も画期的だ。

 

 全員が画一的に同じものに取り組むのではない点について三澤さんは、「高齢者の方は肉体的なこともあり、日常生活に制限が出てきてしまうので、施設内では好きなことを好きなだけやってもらいたい」と語る。それによって脳が活性化するという効果も期待できるという。

 

 正午から午後1時まではランチ、その後、午後の体操(ここでも仮想通貨が手渡される)を挟んで午後4時まで再び、7種類のなかから好きなものを選んで楽しみ、その後は再び職員の運転する車に乗り、帰宅の途に着く。

 

 ともに働く職員が、それまでに無かった新しいカタチのデイサービス施設のオープンについて「新たな試みなのでチャレンジしてみたい」「楽しい施設になりそう」など好意的な意見ばかりだったことも、開業当初不安を抱えていた三澤さんを後押ししてくれた。

 

 2017年3月のオープン時、僅か3人だった利用登録者数は、三澤さんが確信した通り同年6月に20名、9月に30名と順調な伸びを示したことから、1日10名の利用者定員を15名まで増員した。

 

 その頃には、介護関係者ではない一般市民からの問い合わせも増えた。北は北海道、西は岡山県と幅広く、見学者や訪問者もひっきりなしに訪れるようになった。群馬県からは議員も視察に訪れたという。

 

 オープン当初、新施設の形態に懐疑的だったある居宅介護支援事業所からは「利用者さんの笑顔を見ると、こういうデイサービス施設もアリだよね」と肯定的な意見をもらうまでになった。

 

 その後も利用者が右肩上がりだったことを受け、年明けの2018年1月には利用者定員を1日18名まで増やした。すると利用登録者数は45名まで増加、さらに半年後の7月には60名となり、2018年8月現在、稼働率はなんと100%に達している。

 

 利用者の増加に関しては、独自の営業スタンスを取ったことも要因ではないかと三澤さんは振り返る。

 

 毎週のように居宅介護支援事業所を訪問し、担当者と話した内容をメモに残し「ここの事業所さんにはこういう利用者さんが来ていて、こういうサービスを求めている」というのを把握した上で、次にその事業所を訪れる際には、解決策などを提案した。

 

 そうすることで居宅介護支援事業所から信頼されるようになるとともに、困っている要介護者のニーズを拾えるようになったのだ。

 

 一度会った人の名前は忘れないという強烈な記憶力も手助けとなり、こうした独自の営業スタンスで福祉業界にその名を一気に知らしめた。

 

 「職員が数名しかいない施設なので、休みも取れず本当にギリギリのところで回っていましたが、職員の足並みが揃っていたこともあり、若さと行動力、信念でカバーしました」と語る三澤さん。

 

 一方、対利用者でも他のデイサービス施設とは異なる点がある。

 

 それは高齢者を高齢者扱いしないこと。

 

 「高齢者の方に対して、赤ちゃん言葉を使って応対する施設も中にはありますが、そういたやり方には違和感を覚えます」という三澤さん。

 

 「何と言っても利用者さんは一人の大人ですし、人生の大先輩でもあります。介護事業というのは究極のサービス業だと思っているので、きちんとお客様として接するようにしています」とのこと。

 

 実際、利用者からは「言葉遣いや雰囲気が良い意味で(一般的な)デイサービスではないみたい」「応対がホテルみたいで良いね」と好意的に受け取られている。

 

 利用者の男女比率は7:3で男性の方が多い。曜日によっては18名全員が男性の日もよるという。「男性にデイサービス施設を利用してもらいたい」と願った三澤さんの作戦通りだ。

 

 当初の目論見が当たって稼働率が100%となり、なんと現在では「利用したくても空きがない」という嬉しい悲鳴が上がるようになった。キャンセル待ちのリストもある。

 

 もちろん三澤さんには次の展開が見えている。

 

 それは新たな施設をオープンすること。

 

 2023年までの向こう5年間に県内の近隣市で複数の施設をオープンし、秩父も含め4店舗まで増やす計画を進めている。新施設では1日の利用者上限を24名まで増やし、増える需要に対応していく方針だ。

 

 現場のリーダーとしてこれから職員も募集するが、採用の決め手は「仕事に対する方向性が同じであること」「明るい人柄であること」だという。

 

 同時に、働き方のあり方についても思っていることがある。

 

 「働き方改革という言葉があるように、10年前や20年前とは働き方が変わって来ている」とした上で、仕事とプライベートを両立できるような環境を作っていきたいというのが三澤さんの考えだ。

 

 「一生懸命仕事をするのはもちろんですが、ともに働く職員には家族や友達、趣味などプライベートを大切にしてもらいたい。だからうちの施設では残業は少ないですし、オンとオフの切り替えもしっかりしてもらいたい。それがこれからの働き方になる」と語る。

 

 また、人の上に立つリーダーとしては、トップダウンで頭ごなしに上から物を言わない、怒鳴らない、論理的に話を進める、相手の話をまず先に聞く、などに気をつけている。

 

 リーダーとして優れている点はどんなところか聞いてみると「有言実行しているところです」とすぐに答えが返ってきた。周囲の反対を押し切って、画期的なデイサービス施設を開設、成功させている自負があるのかもしれない。

 

 「あとは、どんな問題でも一緒に悩んで解決しようという意気込みかもしれません。喜怒哀楽をともに経験したいです」と白い歯を見せながら答えてくれた。

 

 最後に「5年後にどうなっていたら幸せですか」と聞いてみた。

 

 「利用者さんが楽しんで、職員が笑顔で働いて、施設運営も円滑に進むことが理想。そして同世代のなかでナンバーワンになることが目標」という三澤さん。

 
 
 平成生まれの若きリーダーに死角はない。

 

【三澤颯(みさわ・はやて)】
▽勤務先:三笠商事福祉事業部
▽電話番号:070-1339-6452(会社)
▽生年月日:1994年1月16日
▽出身地:埼玉県秩父市
▽血液型:O型
▽好きな休日の過ごし方:ドライブ、ワイナリー巡り

 

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