自分らしさインタビュー「治療で身体をマイナスからゼロへ、エステで心身をゼロからプラスへ〜エステティシャン・夜久学滋さん

2015.09.01 (火)
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〜治療で身体をマイナスからゼロへ、エステで心身をゼロからプラスへ〜
エステティシャン・夜久学滋さん

 

 生まれ育った日本を飛び出し、フランスでひとりの男が羽ばたこうとしている。エステティシャンの夜久学滋(やく・さとし)さんだ。

 

 彼はお茶や書道などのおもてなしと、鍼灸とエステとアロマを組み合わせた施術を行う「日本文化体験型の鍼灸エステティックサロン」を、地中海に面した温暖な土地・ニースで2016年から開業する。併せて、出張での鍼灸マッサージ施術もスタートする予定で、ゆくゆくはヨーロッパ中に同様のサロンを展開。美と癒しで人々を笑顔にし、人生を前向きにするお手伝いをしていく計画。

 

 名刺に書かれているのは「治療で身体をマイナスからゼロへ、エステで心身をゼロからプラスへ」という言葉。まずは鍼灸や整体といった治療でカラダを本来の状態に戻した上で、エステティシャンとしてお客様を美しく輝かせ、素晴らしい人生へのサポートをするというのが理念だ。

 

 日本でもそれほど多くない男性エステティシャンが、異国の地で活動する決意をした背景には何があるのだろうか?

 

 夜久さんは1980年6月生まれの35歳。がんセンターの勤務医(のちに開業医)の父、薬剤師でエステティシャンの母、そして兄と弟という家族構成。父の転勤で転校続きだった小学生の頃は、内向的な性格で「すぐに泣いてしまう」ような繊細な子供だったが、中学進学と同時に「目立つ事が大好きな人間」に一転、高校では音楽に打ち込んだ。

 

 高校卒業後、医師である父の勧めもあり医学部を受験するものの不合格だったことから、鍼灸師になるための専門学校に進学。当初は「医学部に入れなかった」というモヤモヤした思いもあったというが「医師が命の番人だとしたら、鍼灸師は医師とは別の分野で人の健康のために働く仕事」と気付いてからは吹っ切れた。

 

 卒業までに鍼灸師の国家資格も取得し、鍼灸院での就職も決まっていたが、なんと卒業旅行で出かけたスキー場で左手の親指を骨折。全治3ヶ月の怪我を負ったことから、すぐに鍼灸師として働くことが出来なくなった彼の就職は白紙となった。

 

 回復を待って鍼灸師として働く道もあったが、鍼灸に加えてマッサージも勉強しようと考えた。偶然にも同じタイミングで母がエステティックのサロン及びスクールをスタートしたことから、そこでエステティシャンとしての勉強を開始。エステに興味が無いなかで「これからは男性エステティシャンも必要な時代になる」という周りの声も後押しとなり、新たな一歩を踏み出したというが、エステのことなど全く知らない夜久さんが美容業界で苦労したことは想像に難く無い。

 

 当時を振り返って一番大変だったというのがフェイシャル、つまり顔の施術で「自分の手をお客様に乗せるにも“手が重すぎる”、“今度は軽すぎる”などの指摘を受け、このたったひとつの動作を習得するだけでも丸一日かかった」という。
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 さらに困ったのが、夜久さんが男性だということ。男性エステティシャンがまだ市民権を得ていない10年以上前のこと、男という理由だけでお客様からの指名を得られず、かなり悔しい思いもした。

 

 「お客さんを気持ち良くさせるだけではダメ。きちんとした技術に接客サービスが合わさって初めてお金を頂けるエステティシャン」とは教わっていたが、そもそも施術する機会がなければ、自らの技術向上のチャンスすらない。この窮地に夜久さんは、男女問わず、ひたすら友人たちに無料で施術し、必要なら鍼灸の施術もエステの前に行っていた。エステティシャンを辞めることは全くと言っていいほど考えなかったという。

 

 なぜか?

 

 それは「サロンに来られたお客様は、肌が美しくなったり痩せたりしてどんどん綺麗になっていった。同時に内面にも驚くほどの変化が訪れ、前向きで魅力的になっていくのを目の当たりにし、エステティシャンという仕事にある意味で心酔したから」だという。女性のココロとカラダを美しくし、人生を明るく前向きにするお手伝いをさせてもらえる、こんな素晴らしい仕事があるだろうか?エステに興味のなかった男は、いつしかそんな風に考えていた。

 

 友人たちへの施術で技術を向上させた夜久さん。地道な努力も報われ、エステティシャンの勉強を始めてから一年が経過した頃には、お客様からのご指名で、初めて有料で施術する機会が訪れた。待ちに待った瞬間だった。

 

 「もし自分が女性だったら、もっと早いタイミングで有料施術するチャンスに恵まれていたかもしれない。でも、逆に長く勉強したことで技術も身につけることができたし、何よりもお客様に対して常に感謝する気持ちを培うことができたのが有難い」と当時を振り返る。

 

 人体のツボを熟知する鍼灸師という土台の上にエステティックの技術を磨いた夜久さんは、男性エステティシャンとしても差別化を図れたことなども手伝って、徐々に活躍の場を増やしていく。3ヶ月の英国留学ののち、2006年には25歳という若さでとある専門学校(メディカルエステ科)の専任講師に就任。母が経営するサロンの青山支店トップの座にも就いた。

 

 続いてエステ業界の2大協会である日本エステティック協会と日本エステティック業協会の最上位資格、及び国際資格と国際アロマ資格も取得。08年には日本エステティック協会の35周年記念大会(エステティックコンテスト全国大会決勝)で審査員特別賞も受賞。成功を手にするなかで、施術者としてさらなる高みを求め、整体やマッサージについて学ぶ機会を自ら求め、新たな技術も習得した。

 

 彼が施す整体は主に、身体の土台である「仙骨」に注目して骨盤から全体を整え、身体が本来備えている自己治癒力を最大限活かす方法。整体が骨にアプローチする一方で、マッサージは主に筋肉への施術。乳酸など疲労物質や女性の大敵であるセルライトを排出するため、血管の横にあるリンパ菅の流れを良くしていく。気がつけば鍼灸、エステ、整体、マッサージに精通していた。

 

 転機が訪れたのは2010年の春。専門学校の講師や母のサロンで仕事をしつつも「会社(学校)組織での仕事には向いていない」と思っていた彼は、独立開業することを決めたという。

 

 「こういう風に仕事をしたい、この部分を改善したいと思っても“前例がない”と言われて何も変わらないこともあったし、男に生まれたからには自分一人で(ビジネスを)やってみたいという気持ちもあった」のだ。

 

 ただ、その前にエステ発祥の地であるフランスを見ておきたい、という何となく軽い気持ちから、ワーキングホリデーという若者の海外生活を支援する制度を利用し、2010年6月から1年間にわたってパリで生活することとなる。気がつけば30歳になっていた。この渡仏こそが夜久さんの“その後の人生”を大きく変えることになるとは思ってもいなかった。

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 フランス語を全く話せない状況で渡仏したものの、気がつけば何となくコミュニケーションし、友達もできていた。それでもある日を境に「なんとなく生活して、特に大きな成長も見込めないまま帰国してしまうのは納得できない」そう思うようになっていった。“なんとなくの渡仏”から“何かをきちんと得てから帰国する”という気持ちに変えさせたのは、ある男との出会い。元々は、友人の知り合いで1回しか会ったことのなかった2歳年上の一馬さんという日本人。

 

 イギリスで暮らしていた一馬さんの「帰国前にパリに住んでみたい」という希望を受け入れ、夜久さんのアパートで2人はしばらくのあいだ共同生活を送った。当時32歳だった一馬さんは、若くして日本で物流企業を立ち上げた社長。帰国子女でもないのに英語も米語もペラペラと話し、本業以外でもプロのギタリストとしても活躍するなど、常に前向きで行動力のある彼から夜久さんは大きな影響を受けたのだ。

 

 「2歳年下の自分は、彼と同い年になった時、この人と同じように成長できているのだろうか?」という自らの問いかけに、それは無理だと気付いた。しかし、生まれて初めて心から尊敬すると同時に「この人を抜かしたい」そう思える人に出会った。夜久さんの心に火がついた瞬間といえるだろう。

 

 一馬さんの帰国後、ワーキングホリデーの期限切れが迫っていた夜久さんはフランスに残ることを決意。2011年から1年かけて、南仏・ニースにあるエステ(フェイシャル)の学校で学び、2012年夏からは更に1年かけてスパ(ボディ)の勉強を続けた。その結果、日本人男性で唯一、フランス国家資格「CAP」を取得するところまで登りつめた。

 

 その頃には既にフランスで企業することを決意。帰国後の2013年夏、学生ビザから起業ビザに切り替える申請をして年末には受理された。年明けの14年1月にパリに戻り、個人事業主になるためのセミナー(フランス政府主催)や勉強会に参加、同年11月1日付で独立起業を実現した。

 

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 それ以降、エステティックサロン「ZEN禪NIPPON」のオープンに向けた準備をスタート。現在は2016年頭の開店を目指し全力投球している。彼のサロンの特徴は、お茶や書道などの日本文化の体験、鍼灸とエステとアロマと整体を組み合わせた施術を行う点で、出張での鍼灸マッサージ施術もスタートする予定だ。

 

 今後は「全ての人を美しく前向きにするため」に、フランスから日本、ヨーロッパへとサロンを展開し、エステティックを通じて日本のおもてなしの精神を世界に伝える学校と、老人介護やターミナルケアの現場において美容でQOL(Quality of Life:人生の質)を向上させる病院を各国に設立し、世界を変えることに貢献していく。

 

 これまで順風満帆とも言える彼にモチベーションを高く維持し、常に行動し続ける秘訣はなんですか?と聞いてみた。するとこんな答えが返ってきた。

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 「特に意識していないのですが、自分の周りのことや、自分がやるべきこと、やらなきゃいけないことがあるなら、そのなかの面白さをみつけて楽しくしようとすること。全てのことに楽しさの要素は必ず見つかる。見つけたあとはそれを堪能すること」という答えが返ってきた。夜久さんに成功の女神が微笑むのは間違いないが、彼はどんな青写真をゴールに見据えているのだろうか。いつまでも彼の走り続ける姿を応援したい。心からそう思った。

 

【プロフィール】
夜久学滋(やく・さとし)
1980年(昭和55年)6月19日生まれ、35歳。
千葉県柏市出身。A型。
好きな言葉:出来る・出来ないじゃない、ヤルんだ‼ 人生は一生懸命の方が楽しい♪
ヤラないで後悔するなら、ヤッて後悔した方がいい。
Vouloir, c’est pouvoir. Carpe diem !! C’est ta présence qui la rendra magnifique.

 

 小学生時代は転校続きだったこともあり、ちょっとしたことで泣いてしまうような繊細な子ども。カラダは当時から大きかったので、泣きながら教室の机をひっくり返して外に出て行ってしまったことも。
 中学校入学と同時になぜか「目立ちたがり」のキャラクターに。集会では一番の大声で校歌斉唱していたので、先生が「次は夜久なしでみんなで歌うように」と言ったこともあったという。1年生は「怖い先輩に勧誘されて(笑)バスケ部」だったが、運動が苦手だったので幽霊部員となり、2年生からは吹奏楽部でパーカッションを担当していた。
 高校でも1年次は吹奏楽部に所属していたが、2年次からは軽音楽部に転部してドラムを叩いていた。浪人時代は鬱気味になったものの、寮で仲良くなったプロボクサーの相手をしているうちにボクシングにのめり込み心とカラダのバランスを取り戻す。その後、鍼灸師としての道を決意してからは、手元が命なのでボクシングに距離を置く。
 専門学校時代は、1年生のときに4つの学科の合同旅行をした際、モヒカンにして学校中に一気に名前を覚えてもらうような学生。先生が鍼灸の教科書を作った人の一人で、技術のレベルが高く、全日制だったこともあり、特に必要な実技を深く学ぶことができた。卒業後にすぐに鍼を打てる水準になるなど、恵まれた環境だった。

 

【所得資格一覧】
鍼灸師、AEAJアロマインストラクター・アロマセラピスト、CIDESCOインターナショナルエステティシャン、CIDESCOアロマセラピスト、日本エステティック協会認定トータルエステティックアドバイザー・認定エステティシャン、日本エステティック業協会認定インターナショナルエステティシャン、日本エステティック協会認定指導講師、WATCHセラピスト、フラッシュリンパセラピスト、日本の男性で唯一フランス国家資格CAP及びSPAの資格保持者。

 

【はにわポイント】
 夜久さんにお会いして、舵取りの上手な船長という印象を持ちました。自分という船を客観視すると同時に、周囲の波の高さや目的地に向かう針路などを冷静に判断した上で、荒波にもまれた時などにも焦らず的確な行動を取れる、そんな船長です。
 お話をお聞きしているあいだ、鍼灸・エステ・整体・マッサージに対する思いや、プロとしてそれらを生業にしていく上での行動に全く迷いが見受けられないあたりで、そう強く感じました。言葉の端々に「前向き」「明るく」というキーワードがたくさん出てきましたが、まさに夜久さんの性格を的確に表現しています。
 また、特筆すべきは腰の低さです。実際にインタビューを始めさせていただくまでに「よろしくお願いします」「ありがとうございます」というフレーズが、夜久さんの口から少なくても5回以上は出てきたのを覚えています。
 明るくて謙虚、行動力もあって後ろを振り向かない。こういう船長が舵をとる船に乗れるとしたら、それは乗客だけではなく乗組員としてでも正に「大船に乗った」ような安心感にひたれること間違いなしではないでしょうか。今後のさらなるご活躍を心からお祈り申し上げます。

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