「夢は普通になること」アズ直子さん〜人間力インタビューvol.8〜

2015.12.07 (月)
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〜夢は普通になること〜
アスペルガーで社長、妻、母。アズ直子さん

 

 アスペルガーというハンディキャップを跳ね除け、社長として、妻として、そして 母として前向きに今を生きる女性。それがアズ直子さんだ。

 

 アスペルガーという言葉をご存知だろうか?

 

 アルスペルガーというのは発達障害のひとつ。発達障害は高機能自閉症や注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害、チック障害 などの総称で、生まれつき脳の一部の機能に障害があるという点が共通しているものの、複数の障害を併発する場合もあるなど、個人差がとても大きいという特徴がある。

 

 アズさんによると「高機能自閉症がメインであればアスペルガーと呼ばれ、片付けられない、時間が守れない、コミュニケーション不全など様々な生きづらさが発症する」こととなる。

 
 現在、アズさんは「注意欠如・多動性障害(ADHD)の傾向が強いアスペルガー」と医師に診断された。生まれつきの障害であるため、アズさんの両親は生後すぐ我が子に違和感を感じていたという。些細な音がするだけで寝付けない「音過敏」だったのだ。

 

 アズさんご本人に「自分は人と違う」という自覚が強まったのは小学校1年生の頃。忘れ物が異常に多く(同学年の児童で最多)、時間を守ったり、身支度を整える ことが苦手だったことから先生によく注意された。クラスメートとの関係も良好とは言えなかった。

 

 「思ったことを正直に伝える。嘘が付けない」というアスペルガーの特性から、 あまり裕福でない友人宅に遊びに行った時に「どうしてボロボロのお家なの?」と質問したり、「固執」という症状が出て、赤信号で横断歩道を渡ったクラスメートに「ルール違反はいけないことだよ」と相手が傷つくほどにまで注意してしまうことも。

 

 そんな日々が続けば、周囲と軋轢が生まれることは想像に難くない。仲間外れにされたり、揉めごとが重なった結果、仲良しと呼べる友達は誰一人いないような状況に陥っていた。当然、楽しい学校生活とはかけ離れた毎日で、自己肯定感も低かった。

 

 当時のエピソードでよく覚えているというのが「先生やクラスメートから言われた数々の言葉を思い出し、広告の裏紙に自分の悪口を死ぬほどびっしりと書き連ねた」こと。

 

 それを見た母親が驚いてすぐに破り捨てたというが、その隣でアズさん自身は「自分はどうしてこんなに欠点だらけのダメな子なんだろう」と自分に対して恐怖すら感じていた。

 

 大人になった今なら周囲との軋轢を解消する方法も考えられるが、6歳の児童にそんなことができるはずもなく、幼ながらに考えた末「勉強を頑張れば、忘れ物や遅刻が多く、友達と仲良くできない自分にも居場所があるはず」という結論に至った。

 

 勉強が苦手だったのでは?と推測する人も多いと思うが、知的障害の無いアスペルガーには、言語機能などの知的能力が平均的な児童より高いケースが多い。アズ さんも同じことを繰り返すことで習得する、いわゆる暗記メインの国語や社会など の教科は得意で、テストで良い点を取るのはさほど難しいことではなかった。

 

 勉強とともに熱中したのが読書。体が弱く(発達障害で光過敏・音過敏、人混みが 苦手)、屋外で楽しく遊べ無いアズさんにとって、人と交流する必要がなく、家の中 で過ごせる読書は最も楽しいひととき。同じ本を毎日ひたすら読み返す日々が続き、小学校6年間で「西遊記」「小公女」「うさぎの目」「大草原の小さな家」など数冊をページが擦り切れるほどにまで向かい合った。

 

「西遊記」で現実離れした非日常に旅立てる喜びを知り、「小公女」と「大草原 の小さな家」では話の中に出てくる食べ物の描写に魅せられた。想像力豊かだった 少女は読んでいるだけでお腹いっぱいになった。「今までで一番美味しい思いをし たのは、読んでいた本に出てきた食べ物を想像していたとき」と笑いながら当時を振り返る。

 

 中学生になっても相変わらず仲の良い友達はいなかったが、義務教育を終えて高 校に入ってからは「成績が良ければ、学校であれこれとうるさく言われなくなっていった」ことから、学校生活も段々と楽しくなっていった。

 

 友達付き合いは諦めたが、読書好きに変化はなく、書籍代を捻出するため、開店前や閉店後のファストフード店で清掃のアルバイトを経験。人とのコミュニケーションが苦手だったので接客業務は避けたのだ。

 

 勉強と読書の甲斐もあり、大学は東京学芸大学に進学。文系全般の科目で家庭教師を務めるほど優秀だったアズさんは、日本政府から奨学金を得て中国の首都・北京へ留学するチャンスにも恵まれた。1993年のことだ。

 

 留学先の北京語言学院は、日本で言う東京外国語大学に相当するエリート校。人間関係も苦労したのでは?と聞くと「世界中から留学生が集まる学校で、文化や習慣が全く異なる人たちの中では、アスペルガーであることなど個性のひとつに過ぎず、日本にいる時より快適に過ごせた」と意外な答えが返ってきた。

 

 小学生の頃とは対照的に自己肯定感も上がったが「自分に生きる実力が付いたと勘違いをしていた」という。

 

 留学中には現在のご主人との出会いもあった。大手化粧品メーカー・資生堂の中 国駐在員として北京で仕事をしていた彼は、北京語言学院で中国語を学ぶうちにアズさんと親密になり、帰国した1996年に二人は結婚。

 

 知り合って約2年だったが、義母が末期ガンだったため結婚を急ぐことに。その頃のアズさんは、語学を活かして横浜で貿易事務の仕事をしつつ、義母の介護で湘南地区の病院まで通う日々が続いた。

 

 前述の“勘違い”とは学生と社会人の違いを知らずにいたということ。「学生の頃と違い、好きなことだけをやっていては会社に居場所はない。言葉遣いも知らず周りと衝突し、相変わらず人とのコミュニケーションを円滑に図れない自分に気づいた」という。

 

 就職してわずか1年でリストラの憂き目にあい、その後数年にわたって複数の会社を転々とした。そんな状況に終止符が打たれたのは1998年。長女を出産し母親になったのだが、絵に描いたような幸せの日々が訪れることはなかった。

 

 アスペルガーであるアズさんは家の片付けはおろか、料理が苦手で三度の食事を 提供することすらままならない。普通のお母さんならできることが全く出来ず「娘や夫に負担をかける毎日」が続いた。

 

 そんな状況下「もう外で働くのは無理だ」と感じ働くことを諦めかけたが、家庭に閉じこもることは本望ではなかったため、社会に参加する方法を必死に考えた末にネットショップを立ち上げて起業。自宅で働ける環境を整えた。

 

 義母の看病中にスクールで習ったアロマオイルを生かし、フラワーエッセンスなどの雑貨の卸売や小売りを始めたところ、インターネットが現在ほど普及しておらず競合相手がいなかったこともあり、事業はすぐに軌道に乗った。「人と会わなくて良いし、外にも出なくて良い。理想的な労働環境だった」という。

 

 また、順風満帆だった事業も、ネットが広がりを見せるにつれ同業他社が乱立、売上は下降線をり、10年も経たずして本業では立ちゆかなくなる。会社を維持するためにアルバイトという選択を余儀なくされた。

 

 アルバイトに選んだはのは介護士。「自宅の近くで出来るということと、義母の介護がうまくできなかったという後悔の念」が心のどこかにあったから。介護士と ネットショップ社長という二足にわらじを履きながら、事業を立て直すためにビジ ネス書を読み漁り様々な講座やセミナーにも参加した。ツイッターやfacebookの勉 強をしたのもこの頃だ。

 

 そんな時、とある書籍に出てきた“アスペルガー”という言葉が目に止まった。「これ、症状から判断すると自分のこについて書いてるのではないか?」そう思ったアズさんは病院に行って診察を受ける。思っていた通りアスペルガーと診断された。

 

 「これで幼い頃から抱いていた“人と違う”という違和感や、自分が何者なのかという疑問が解消された」と同時に「社会で他者と差別化を図るという意味で、ブランディングできる武器を手にいれた」と気づいた女社長は、同じアスペルガーに役立つ情報をSNSから発信していくことを決意。

 

 気に入ったものには寝食を忘れるほどのめり込む彼女は、「アスペルガーが遅刻しないために」など実用的な情報を発信。瞬く間にツイッターのフォロー数が25,000人、facebookの友達が5,000人まで膨れ上がるなど、2010年当時のネット界では大きな影響力を持つ存在に。facebookの女王などと持てはやされ、講演依頼が舞い込んだり書籍を出版するなど一気に時の人となった。

 

 事業も再び軌道に乗り始めた。同時にSNSを駆使した人とのやり取りの中を繰り返すうち、コミュニケーション不全というアスペルガー特有の性質も改善傾向が見られた。その要因はfacebookのマニュアル本などに書かれた教えを守ったこと。

 

 人の嫌がることは書かない。過激なことを発信すると炎上してしまう。仲良くなるためには自己開示してプロフィールを整える。相手のプライバシーに配慮するなど、リアルなコミュニケーションでの基本的かつ大切なことを学んだことが、アズさんの思慮深く思いやりに溢れた人柄を形成する上で大きく役立っているのだ。

 

 SNSから火がついたアズさんの快進撃から5年が経過した今、社長業について聞いてみた。すると「独立起業は(外で働けないなどの理由から)消去法で選んだこと。

 

 今まではひたすら自分が出来ることを頑張ってきたが、これからは「社長業が、アスペルガーで苦しんでいる人を救う“社会貢献”と融合すればいいと思っている」という答えが。

 

 「障がい者のための事業を(障がい者を救うための)ボランティアとみる人が多いが、障がい者が社会で仕事を出来るようトレーニングする場を作ったり、障がい者自身がお金を稼ぎ、お互いに経済活動で支え合える仕組み作りを整えたい」と、ビジョンはすでに出来ている。

 

 教育と医療がセットになった施設の運営も視野に入れている。基本的なことで通常の学校では学習科目になっていないような「生活の整え方」に加え「病気にならなための知識」「社会に出た時に役立つ体のメンテナンス方法」を教えつつ、障害によって起きるハンディを克服したり、うつなどの症状を治したりするなどトータルでサポートする施設だ。

 

 常に仕事のやり甲斐を感じる日々だが、特に「思いを込めて書いた本を喜んでもらえた時に、本当に人様の役に立てている」ことを実感。今後の夢は「ずっと活躍し続けること」病気にならずお金や人間関係にも困らない状態を続けていければ、 自分が講演会や書籍を通して伝えていることの正しさを、身をもって証明できるからだ。

 

 一方で、家庭人としては「普通のお母さんのようには出来ない」いう。娘さんの学校への提出物を仕上げたり、持ち物をきちんと揃えてあげるなど、基本的なことが苦手。

 

 それでも、アルペルガーの母を持ち、3年間の留学経験を有する娘は、自分と異なる他者への柔軟性を持った、人付き合いが上手で素敵な女性に成長。もともと海外駐在経験があり、寛容さと優しさも持ち合わせるご主人にも恵まれた。

 

 今一番楽しいのは「娘のお弁当を作っている時。もともと作れなかったのに今では毎日できるようになったので達成感があるから」と目を細める。高校卒業まであと2年近くは弁当作りの日々が続く予定だ。

 

 最後にメッセージをお願いした。

 

 「アスペルガーは不幸ではない。上手くやれば人より幸せになれる要素がいくつもある」と自身の経験を踏まえた言葉が真っ先に出てきた。

 

 そして「自分のやりたいことをやったらいい。自信がなかったりお金がなかったりするから断念してしまうのはもったいない。自分が心から納得して、なおかつ周囲に役立つようなことであれば、色々な応援が付いてくる。悩んだり迷ったりして立ち止まるのはダメ。何かしたほうがいい」と力強く締めくくってくれた。

 

 アズ直子、アスペルガーに生まれ紆余曲折の人生を歩んできた彼女だからこそ言えるこの言葉、生きづらいと感じている全ての人に届くことを心から願う。

 

【アズ直子(あず・なおこ)】
▽肩書:有限会社アズ代表取締役、一般社団法人マスターセラピストトレーニング協会代表理事
▽生年月日:1971年10月21日
▽出身地:東京都調布市
▽血液型:O型
▽学歴:東京学芸大学教育学部国際文化課程日本研究科卒業(言語学) 、在学中に政府派遣により北京留学(1993-95)
▽趣味:facebook
▽好きな休日の過ごし方:休日がない
▽好きな言葉:翼を持たずに生まれてきたのなら、翼を生やすためにどんな障害も 乗り越えなさい(ココ・シャネル)

 

【有限会社アズ】
▽所在地:渋谷区広尾5-21-5
▽営業時間:10~21時
▽定休日:不定休
▽電話番号:03-6447-7538
▽HP:http://asnaoko.com/
▽facebook:https://www.facebook.com/asnaoko/?fref=ts
▽メール:asnaoko@gmail.com

 

インタビュー(写真撮影30分、インタビュー2時間程度)にご興味のある方は、こちらをご覧ください。プランによっては動画撮影やミニ自分史作成なども行っております。http://haniwap.com/interview

 

《はにわのイベント開催予定》
2016年1月20日(水)「日本の未来を輝かせる!起業家交流会スターボックス☆第2回イベント~心de仕事~」

 

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