公益社団法人⽇本駆け込み寺・千葉龍⼀さん〜人間力インタビューvol.9〜

2015.12.18 (金)
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〜20歳から生き直しの人生〜
公益社団法人日本駆け込み寺・千葉龍一さん

 

 小学生の頃からサッカーや野球をはじめ、陸上に水泳などスポーツ万能な10代を過ごした千葉龍一さん。何不自由なく過ごしていた彼の人生が180度変わったのは今から10年ほど前のこと。法学部に籍を置く大学1年の終わり、春休みだった。

 

 その日の朝、千葉さんは高校時代に野球部でともに汗を流した友人を助手席に乗せ、大学のある八王子に向け新青梅街道を走行していた。

 

 それは一瞬の出来事。

 

 前方に突然出てきた(と見えた)車を避けようとして思い切りハンドルを切ると、千葉さんの運転する車は反対車線に飛び出したあと、ガードレールに衝突。

 

 二人は救急車で病院に運ばれた。

 

 千葉さんは奇跡的に無傷だったが、助手席の友人は帰らぬ人となった。ほぼ即死に近い状態だったと聞かされた。死亡事故を起こしたことから、その日のうちに病院から警察署に移送、令状を取られて署内の留置場に拘留された。

 

 「自分が運転したことで彼の人生を奪ってしまった、、、」

 

 「とんでもないことをしてしまった。死にたい、、、」

 

 頭の中でそんな想いが際限なく繰り返される。

 

 25日間にわたって拘留され続けたのち、保釈金でようやく釈放された。

 

 大学にも自ら事故の報告をした。退学になる可能性もあったが「そのまま通ってもらって良い」と言われた。

 

 それから1ヶ月余りが過ぎ、裁判が始まった。

 

 判決は禁錮2年執行猶予5年。

 

 重大な事故だったが、千葉さんが心から反省していること、月命日の墓参りを誓ったこと、裁判が始まるまでに野球部時代の仲間が500人もの署名を集めた嘆願書を提出したことなどを鑑みて、裁判官は執行猶予付きの判決を下したのだった。

 

「刑務所に行けば罪を償える」と考えていた千葉さんにとって、それは「償えることは何もない」と宣告を受けたようなもの。「自分に生きる価値はない」とひたすら自責の念に駆られたという。

 

 ところが、判決後に野球部の仲間から「いろいろあったけど、生きていてくれ。生きていてもらいたい」と言われた瞬間、何も答えられずただ頷くだけだったものの心の中で何かが変わり始めた。

 

 もう死ぬことは考えなくなっていた。

 

 なぜか?

 

 それは「たくさんの人が(交通事故を起こした)自分に関わってくれるなかで、自殺するのは逃げることで無責任」という思いから。

 

 「殺された人に謝罪できるのは殺した人だけ。生きていれば謝り続けられる。自殺するのはその(謝罪する)責任を放棄した人」だと千葉さんは言い切る。

 

 「亡くなった友人の家族に償えるのも自分しかいない。これからきちんと生きることが責任の取り方だ」と気付いた20歳の若者は、その後の人生について考え抜いた結果、ある結論に至った。

 

 弁護士になろう。

 

 弁護士になれば、自分のように犯罪を犯した人に関わることが出来る。

 

 「(罪を犯した人間が)どのように罪を償えば良いか、(弁護士なら)考えるきっかけを与えられるかもしれない」

 

 そう考えたのだ。

 

 そこから猛勉強の日々が始まった。

 

 大学卒業後、法科大学院に進んでからは平均10時間以上も机に向かう「修行僧みたいな」3年間を過ごし、26歳で大学院を無事卒業。

 

 その後も勉強を続け、27歳から3年連続で司法試験を受験した。

 

 しかし、いずれも不合格。

 

 弁護士になることを決意してから10年頑張ったが、女神が彼に微笑むことはなかった。

 

 司法試験には“5年以内に3回までしか受験することができない”という規定があり、4回目を受けるには再度大学院に入学し、全てをやり直す必要がある。

 

 3回目の受験は東日本大震災の発生した2011年だったが、母親が頭蓋骨を骨折して意識不明になるという不運も彼を襲っていた。

 

 30歳で職歴なし。

 

 このまま司法試験の勉強だけを続けたら、人生を棒に振ってしまうかもしれない。

 

 方向転換を余儀なくされ、インターネットで職探しを始めた。

 

 そんな時、ニュースなどでその名前だけは知っていた「公益社団法人日本駆け込み寺」が、ファンドレイジング担当の職員を募集していたのを発見する。

 

 2002年に設立された日本駆け込み寺は、“性別、年齢、国、宗教や、被害者、加害者を問わず、DV、家庭内暴力、ひきこもり、虐待、多重債務、ストーカー、自殺など、さまざまな問題を抱えた人々の相談を受け、サポート”している団体。(同法人HPより)

 

「困っている多くの人の相談を受け、サポートする活動に惹かれた」という千葉さん。「自分が(日本駆け込み寺で)活動することによって、一人でも多くの人を助けることに繋がるかもしれない」という思いが募った。

 

 すぐに履歴書を送って面接を受けた。関西弁を話す法人代表からは「ええ顔してるやん。いつから入るんだ」と言われ、「3ヶ月の研修期間中に一定額の寄付を集める」ことを条件に、2013年5月からファンドレイジング担当として採用された。

 

 ファンドレイジングとは、公益法人など非営利団体が個人や法人、政府などから活動資金などを集めること。

 

 営業はおろか、社会経験の全くない30歳の男は、何から手を付ければ全く分からなかったが「営業は技術じゃない。誰でもいいから毎日、人と会え。そこから始まる」と代表から言われ、素直に実践した。

 

 その結果、3ヶ月後には規定額を上回る寄付金を集めることに成功。「ここでやっていくことが出来る」と安堵感で心が満たされた。

 

 ファンドレイジング担当として成果を出したことから、広報(法人の活動内容PR、歌舞伎町のボランティアパトロールなど)や相談員(電話相談、刑務所からの出所者の面談など)も兼任するようになった。

 

 歌舞伎町のパトロールでは、毎週土曜の夜にボランティアスタッフとともに、1時間にわたってティッシュを配りながら、どんな人からの相談も無料で受け付ける駆け込み寺の存在をPR。

 

 2年半前のスタートから、これまでの224回で延べ1,086名(2015年12月14日現在)がパトロールに参加、 はじめは殆どの人から相手にされなかったが、現在は歌舞伎町で働く人から「お疲れ様〜」と声をかけてもらえるまでになった。

 

 電話相談や出所者との面談で最も気をつけているのは、“先入観を持たずに相手の話を聞く”こと。「単に法律に照らし合わせて“こういう解決方法があります”と伝えるのではなく、ケースバイケースで対応することが重要」だという。

 

 “相談者自身に解決してもらう”というスタンスも大切にしている。道筋を見つけるなどの手助けはするが、「最終的には相談者本人が問題解決に向けて自発的に行動すること」が必要だからだ。

 

 相談を受けていて一番嬉しいのはどんな時ですか?と聞いてみた。

 

 すると「“死にたい”と言って相談してきた人が、“今日一日千葉さんのおかげで生きることができた”と言われるなど、感謝された時。自分が誰かの役に立ったということをダイレクトに感じられるから」という答えが返ってきた。

 

 現在は、日本駆け込み寺の仕事に加え、刑務所からの出所者へのサポートを主な活動内容とする「一般社団法人再チャレンジ支援機構」の広報・営業も担当している。

 

 日本駆け込み寺への相談者の中には再就職先を求める出所者がいるが、同法人が公益社団法人であり、特定の企業への就職斡旋が出来ないことから、2014年4月に新たに立ち上げたのが再チャレンジ支援機構。

 

 出所者の再就職先を斡旋、そのなかのひとつが、同機構が企画、協力企業が運営する飲食店「新宿駆け込み餃子」で、現在は2名の出所者がスタッフとして働いている。

 

 再チャレンジ支援機構の仕事も受け持つことを決断したのは「(罪を犯した)加害者と関われる機会だから」だという。

 

 それはどういうことですか?と聞くと、

 

「自分は(大学時代に交通事故を起こしてから)生き直している。出所者の人にも生き直してもらいたい」と力強い言葉が千葉さんの口から出てきた。

 

 世間には出所者へのサポートに否定的な意見もある。

 

 それに対して千葉さんは「あくまで主観になるが、被害者に謝罪できるのは加害者しかいない」とした上で「出所者の再犯率が60%という事実を受け止めないといけない。再犯率を下げないと被害者が増えることに繋がる。そのために自分ができる活動をする」という強い信念を持っている。

 

 活動の原動力はどこから来るのか?

 

「日本駆け込み寺や再チャレンジ支援機構に関わって、一番救われているのは自分。出所者の笑顔に助けられている。世直しだけど自分助け」なのだという。

 

 交通事故から10年以上が経過するなか、事故から一度も車の運転はしていない。運転免許証を返還し、今後も絶対にハンドルを握らないと決めている。「自分が運転している限り、事故が起きる可能性がセロではないから」だ。

 

 裁判の時に誓った月命日の墓参りは欠かさずに続けている。事故を起こした自分のことを許していないし「一生許すことができない」と感じている。

 

 それでも前に進むしかない。

 

 生きるしかないのだ。

 

 「どう生きていくかは、これらも一生、自分に問い続けていく」という千葉さん。

 

 彼に救われる人がこれから増え続けることは間違いない。

 

【千葉龍一(ちば・りゅういち)】
▽肩書き:日本駆け込み寺・ファンドレイジング担当
▽生年月日:1982年7月27日(33歳)
▽出身地:東京都
▽血液型:O型
▽出身校:獨協大学法科大学院
▽趣味:お酒を飲むこと、DVD鑑賞、筋トレ
▽好きな休日の過ごし方:DVDを見ながら自宅でのんびり
▽家族構成:両親、弟
▽好きな言葉:生き直し
▽Facebook:https://www.facebook.com/ryuichi.chiba.96

 

【公益社団法人日本駆け込み寺】
▽メール:info@nippon-kakekomidera.jp
▽電話:03-5291-5720
▽所在地:東京都新宿区歌舞伎町2-42-3 林ビル1F
▽営業時間:10:00〜20:00
▽定休日:年中無休
▽HP:http://nippon-kakekomidera.jp/
▽Facebook:https://www.facebook.com/nipponkakekomidera/

 

《これまでの100人インタビュー》
▽Vol.8〜アスペルガーで社長、妻、母・アズ直子さん〜
▽Vol.7〜アロマセラピスト・平郡真紀さん〜
▽Vol.6〜ヘアメイクプランナー・川崎敏智さん〜
▽Vol.5〜理容師・藤平和馬さん〜
▽Vol.4〜ライフプラン コンサルタント・渋谷和比古さん〜
▽Vol.3〜モティベーター・鴨田剛さん〜
▽Vol.2〜社会保険労務士・大島辰徳さん〜
▽Vol.1〜行政書士やちだ事務所・谷内田真也さん〜

 

100人インタビューをご覧になって、正式なインタビュー(写真撮影30分、インタビュー2時間程度)にご興味のある方は、こちらをご覧くださいませ。
プランによっては動画撮影やミニ自分史作成なども行っております。http://haniwap.com/interview

 

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